[0470-trip] 大多喜〜養老渓谷

休日の午後にでも、ちょっとお出かけしてみる0470-trip。
第2回目は大多喜の街中と少し足を伸ばして養老渓谷あたり。
半島にあれど海のない町をうろうろしてみる。




01: 旅は腹ごしらえから
大多喜には美味しいお店もちょっとおしゃれなお店もあるのだけれど、ここはあえて、道の駅に寄ってみる。
道の駅たけゆらの里おおたきは、地元農家の産物直売や、いかにも手作りなお弁当がならんでいて、ほぼすべての商品に生産者の名前が入っている。この安心感。
名物の太巻き弁当なんかもあったのだけど、(ふたたび)ここはあえて、田舎っぺ天丼を選んでみる。ナスやシシトウやキノコの天ぷらと、たぶんもう新米だと思われる「いすみ米」に、甘じょっぱい醤油タレ。絶対に添加物も保存料も入ってない、お母さんの弁当の味がする。380円也。安い!そして旨い!








竹細工の店: 02
国道297沿いの大多喜の入り口にある、竹細工が並んでいるお店に入ってみた。手作りの籠や民具が所狭しと並ぶ店内で、なぜか目を引くちぃさい「しょいっこ」。高さは15センチくらいでミニチュアっぷりがとっても愛らしい。「この町の深い山にはコロボックルとか、きじむなーがいるのかな」なんて想像して少しワクワクしてしまった。
さて、農家のお婆さんが収穫や行商に使っている本物のしょいっこの気になるお値段は、というと、5千円〜8千円。おばあちゃん達はきっと一度買ったら手直ししながらずっとずっと使い続けるんだろう。背負子以外にも手提げや魚籠、野菜や魚や梅を干すザル、どの品物も飾り物ではなくて生活に馴染んだ日用品だ。同じ用途のプラスチックや金物の代用品ならホームセンターに並んでいるけれど、ここのは全部、竹や藤製品。こんなお店はありそうで、他にない気がする。





03 : 町並み
大多喜の街中のみちはよく角に突き当たりクネクネと曲がり、0470-vol.0でも取り上げた大屋旅館や、豊乃鶴酒造房総中央鉄道館(ジオラマが意外に圧巻)や見学の出来る渡辺家住宅、和菓子の津知屋(十万石最中はここのに限る)など、街道沿いには古い建物が残っていて、城下町の名残なんだな、と思わせる。「鍛冶町」や「紺屋」といった地名の看板もあった。




大多喜町役場 : 04
なかなかいいフォルムをした建物だと思っていたら、著名な建築家の作品だった。中に入ってみようと思っていたけど、築50年を経過したため今は大規模な改修中。無くならずに利用されると聞いて、すこし安心した。工事が終わったらまた来てみよう。
屋上の「大」の字をモチーフにしたオブジェやコンクリートのモダンな鐘楼はきっと、ランドマークになるように、とデザインされたのだろう。今もまだ低い家並みの連なる大多喜の街ではちゃんと当初の意図通りに機能して、ちょっと離れた場所からも、ちゃんとちらちら見えるのだ。


活版印刷機を発見 : 05
街中の看板に「活版」の文字を発見。まさかと思いながら印刷屋を訪ねてみる。一般的なオフセット印刷機が並ぶなか、一台だけ手摺りの活版印刷機が残されていた。今となってはめっきり使うことはなくなったというが、壁一面にぎっしりと並んだ活字たちの姿は圧巻だった。印刷って大変だったんだなぁと昔の仕事の苦労を思った。


06 : 養老渓谷へ
大多喜の市街から養老渓谷まではクルマで20分くらい。のどかな田園風景と、その中を走るいすみ鉄道が旅情を誘う。車を停めて「いすみ鉄道来ないかなぁ。」なんて当ても無く言っていると踏切が鳴った!シャッターチャンスを逃すまいとカメラを構えてしまう。日も少し傾き始めた。興奮気味の僕らの横をおじいさんがゆっくりと通り過ぎた。「撮れたかい?」とでもいうようにニヤリ、と笑いながら。そろそろ最後の目的地へ向かおう。




07 : 弘文洞跡とトンネル
車を停めて600Mほど養老川を歩くと弘文洞跡につく。養老渓谷の中でも有名な景勝地でフライフィッシングのポイントでもあるらしいけれど、夕暮れの近づいた時刻、もう誰もいない。ここまでくると空気も澄んでいて心地がい。山の中で川のせせらぎを聞いていると時間を忘れてしまいそう。自然と呼吸も深くなった。
ここは江戸時代に川廻しのために掘られたトンネルの跡でトンネルの上部は30年ほど前に崩落したという。川と川が直角に交わっている、という天然自然にはまずありえない光景なのだけど、工事から長い長い時を経て、どこまでが天然の形状でどこからが人の手によるものなのか分からない、第3の自然とでも呼びたい景観が生まれている。




弘文洞に行く手前にある手彫りのトンネル。二つのトンネルの間から光が差し地上が見える不思議な光景に魅了され、弘文洞よりこっちが目当てで訪れる人も、いるとかいないとか。歩きで入っていく時はちょっとこわい。











夕焼けを探して : 08
水平線でなく、うねる山の稜線に落ちていく太陽を土手に座って眺めた。シルエットになっていく房総の低い山並みもまた美しい。土手はまだ熱を持っていてとても温かかった。