大きな魚ではない。

私は、毎日ではないけれど、牛も豚も食べます。でもそれらが解体される現場を見たことはありません。そして私は一度も鯨肉を食べたことがありません。でも今朝、クジラが解体される現場を見学してきました。和田浦の外房捕鯨では、ツチクジラの解体作業を一般に公開しています。6月21日午前9時、今年はじめての水揚げがありました。
毎年、この初漁の解体を、近所の小学校の5年生が授業として見学に来るそうです。解体場に到着すると、黄色い帽子をかぶった子供たちがすでに大勢いました。


作業の詳細を伝える記事はネットを検索してもたくさん出てくるので、ここに書くのはやめようと思います。和田の小学生たちは、初めはみんな歓声をあげていたけれど、作業が進むにつれて一様に無言となり、口元を押えて目を背ける子もいたし、真剣な表情で見つめ続ける子もいました。

私の鼻と胸の中には、お清めのために播かれた清酒の香りと、10mを超える巨大な海獣が発する魚のそれとはまったく違う臭いと、沖から吹く潮風の匂いが混じりあった、複雑な空気が今現在も漂っています。

途中から雨が大粒になり、ずぶ濡れになりながら写真を撮っていたら、「ザ・コーヴ」を観てマレーシアから取材に来たという撮影クルーの女性が黙って傘を差し掛けてくれました。思わず「これが"just a big fish"じゃないことは、彼らが一番よく分かっている」と彼女に言ってしまったら「これが"just a bad thing"じゃないことは、私たちもよく分かっている」と静かな声で応えてくれました。

クジラの解体は漁の成果に合わせて翌日の早朝や当日の夕方に行われ、直前に外房捕鯨のブログにお知らせが出るそうです。クジラ漁のシーズンは6〜9月、年間の捕獲は26頭に限られており、漁が順調であればその間にあと25回行われます。