房州地布をご存知ですか?

 白浜海洋美術館で行われていた、あわコットンクラブの定例会におじゃましてきました。

彼女たちがしていたのは、同美術館に保存されているたくさんの房州地布を整理し、縞帳という見本帳にまとめ、資料化する作業です。これらの地布は、明治後期から大正にかけての庶民の普段着や布団地で、どれも手紡ぎ・手染めの糸を手織りしたもの。その時代の房総では、着る物・使うものは各家庭で綿から手作りしていたんですね。

ひとつとして同じ柄はなく、手仕事独特の風合いを持つ布たちは、現代人の私の目にはとても新鮮でぜいたくなものに映りました。しかし、あくまでも工芸品ではなく日用品なので、誰も作らなくなってしまった今、その技術はとくべつ保存されていません。

たとえば、スーパーへ行くと何種類もの漬物を買うことが出来ます。そうしたものがなかった時代には、各家庭に独自のレシピがあって、季節の漬物を漬けていたことでしょう。生活に根ざした文化は、便利な代替品や新しい習慣が入り込むと、すこしずつ変化して、あるものはいつか消えていきます。おばあちゃんのぬか漬けがスーパーの漬物になり、手紡ぎ手織りの着物がユニクロのジーンズになった今、その代わりに私たちが手にしたはずの豊かさって一体何だろう…という疑問にはなかなか答えが出そうもありません。

でも、今日、コットンクラブ主催の笠井さんからお話を伺っていて感じたのは、そうした失われつつあるものへの郷愁ではなくて、むしろ「とにかく木綿が好き、織物が好き、南房総の漁村の風景が好き」というキラキラした情熱でした。古布を手にしたみなさんの、眼鏡の奥の目は、少女のように輝いていました。

あわコットンクラブでは、これも消え行く手技である漁師網の技法を学ぶワークショップも行っているそうです。

あわコットンクラブ、講演とワークショップのお知らせ
2011年7月18日(月・祝)
午前9時30分〜10時30分
場所:千倉町漁村センター
同時開催の講演「イワシはどう利用されてきたか=江戸期の干鰯と木綿文化」
講師:岩本紀久雄先生(水産学者)
無料

10時30分~12時30分
ワークショップ 「漁師網の技法を学ぶ」
初級コース 〈本目〉
上級コース 〈蛙又〉
講師   地元漁師
受講料  1500円(材料費込み)

 
問合せ先:あわコットンクラブ事務局 
TEL/FAX. 0470-44-1780

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